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メモリー  ミュージカル「キャッツ」から
浅利慶太 訳詞  アンドリュー・ロイド・ウェバー 作曲

メモリー 仰ぎ見て月を 思い出を辿り 歩いてゆけば
出逢えるわ 幸せの姿に 新しい命に

メモリー 月明りの中 美しく去った 過ぎし日を思う
忘れない その幸せの日々 思い出よ 還れ

街の灯は 消え去り 夜の終わりが 古き日は去り行きつつ 夜明けが近づく

デイライト 夜明けとともに 新たな命を 日はもう昇る
この夜を思い出に渡して 明日(あした)に向かうの

木漏れ陽は輝き 光があふれる 花のように朝が開く 思い出は去る

お願い 私にさわって 私を抱いて 光とともに
わかるわ 幸せの姿が ほら見て あしたが


「キャッツ」という猫の世界を舞台にしたこのミュージカルを私は見たことがないのですが、この「メモリー」という劇中歌、なんてすばらしいと聞き入っていました。

日本では「劇団四季」の公演でした。その創設者でもあられた浅利慶太氏が訳された詞です。この作品の原本はT.S.エリオットというノーベル文学賞作家の「ポッサムおじさんの猫とつきあう法」。ポッサムおじさんとはエリオットの事。この中の詩に曲をつけたのがA.L.ウェバー。この方はよい詩を読むとすぐ言葉に音楽が湧いてくるのだそうです。いっぱい出てくる猫たちの性格付けをし、曲をつけ物語に仕立てたのです。

この曲を歌う、老いさらばえたグリザベラという名の猫は、実はこのミュージカルのためにエリオットの別の作品から連れられてきたのだそうです。
名の知れた娼婦猫、暗い過去を背負いながら救済を願う罪深い猫。過去の人生華やかなるころと今を思い歌う。彼女の思いを掬い取る幼い猫シラバブも援け支え歌う。

登場する猫たちは古い路地裏に住み、人間に飼いならされることを拒否し、自らの人生を謳歌する強い心と無限の個性、行動力を持ちジェリクルキャッツと呼ばれている。

ある宵、24匹の猫たちはもっとも純粋なジェリクルキャッツを選ぶ。
選ばれたのはグリザベラでした。